三岸節子短歌ポスト入選作品(平成19年度前期分)

三岸節子の作品について詠んだ短歌を館内で募集し、ご応募いただいた作品です。選者は、中部日本歌人会委員長の小塩卓哉氏です。

【優秀作品】
*その他*
《評》「その昔」とはどれくらい以前のことか。今ならばもう冷静に思い返せるといったほどの時間が経過しているのだろう。当時「うちひしがれ」ていた作者は、三岸の絵をみて赤を基本としたその色調に、大いに救われたのであろう。どれくらい前のことか、どのようなことに悩んでいたのかは、全く明かにされていないが、それだからこそ、絵画を見てもたらされる救済というものが、読者全般に伝わってくるのだと言えよう。結句を現在形でまとめたのも歌に力をもたらした要因である。
*自画像*
《評》自画像を描く際に画家は鏡と向き合っている。節子の「自画像」も同様で、そうして書かれた絵を前にして、作者は鏡の中の節子が未来に向けての第一歩を歩み出したことに気付いたのである。鏡を見て描かれた自画像に向かい合う鑑賞者は、さながら鏡をのぞき込むように作者の顔と真向かうこととなる。自画像の眼差しと向かい合うとき、節子の画家として立とうという決意は、鑑賞者に真摯に迫ってくるのであり、その迫力がこの歌を作品に作らせたのだと言えるだろう。
*アルカディアの赤い屋根*
《評》

第二句が、句割れと字余りを起こしているのでやや変調であるが、そうした句を含む上句全体のややせせこましい音調が、結句ののびやかな感じを演出しているとも言える。作者は、アンダルシアにあるアルカディア・デ・グアディス村で絵筆をとる節子のことを思い、それから一気に現在の一枚の絵と自分との位相に至ったのである。あの時のアルカディアの赤い屋根は現在どんなであるかと。それが「今アルカディア」という結句に結晶したのである。作者の過ごした豊かな鑑賞の時間がこの結句から伝わってくる。

【佳作】
*花*
*坂の上へ(アンダルシア)*
*細い運河*
*自画像*
*その他*

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