三岸節子 室内画の誘惑ー美の小宇宙を描いてー 2009年9月1日(火)〜11月15日(日)

三岸節子は室内にある家具や小物、アトリエにある壺やガラスの花器など、愛着を感じて身近に置いていた様々なものをモチーフに、キャンバス上に“美の小宇宙”ともいえる世界をつくりだしました。気に入った品々のもつ造形美をじっくりと眺め、自身の作品の中に取り込みました。時にはマチス風に鮮やかな色彩で、時にはボナール風に軽やかな色使いで、そして時にはブラックのように抑えた色調で・・・(※)。描かれたモチーフは作品を構成する重要な一部となり、画面の中で永遠に輝き続けています。今回は初期から晩年にいたる、身近な品々をモチーフに描いた静物画や室内画を中心にご紹介します。
※マチス、ボナール、ブラックともに三岸が好んだフランスの画家。

日常生活の中の美

「住居、家具、使用している細々な品々まで神経のゆきとどいたもの、つまり水準の高い芸術品のなかに日常いなければ、たいへんきめが荒くなるのです。ふだんの茶呑茶碗一つにまで繊細な心配りがほしいのものだと思うのです。(中略) 私は今のところ毎日室内に陶磁器やグラスを一杯ならべて、絵も描かないでほれぼれと眺めているのです。これらの美の感覚が徐々に消化されて私の体内に浸透してゆくのです。それらはさまざまな色彩をもっている美の要素です。色彩の個体がそれぞれもつれあって音をたてているのです。」

(三岸節子「生活美」『美神の翼』より)

「室内」1939年

室内の美

「私は室内を描く。此処の一隅、彼処の一隅、すべてみな室内に魂が宿っているかのように、常に貴重な雰囲気を創り出さねばならぬ。画家は目にふれるものすべて、みな心をゆり動かし創作的感動をよび起さねばならぬ。形の上に、色彩の上に、四季それぞれの濃やかな感覚の上に。この室で音楽を聞き、詩を誦し、文学を愛し、・・・私と共に生長し、歓喜し、生命するこの室内。私が幸福である時、不幸である時、この室内もまるで砂漠のようになったり、また一躍天国に化する趣もある。美の神の宿り給わぬ時、感動の失われた時、私はもう一つのアトリエのお掃除をして花を飾り、赤い敷物をしき、窓をすっかりあけて、遠い野や森を見ながら新しいアラベスクを創り出す。」

(三岸節子「断章T 私のアトリエ」『黄色い手帖』より)

「室内」1942年

静物に思いを託して

「わたくしは毎日、花やら壺やら果実を描く。身辺に転がっているものはなんでも描く。花を描くにあらず、果実を描くにあらず、壺を描くのでもない。線があり、面があり、色彩があればそれでよいのである。造形的要素になればそれでいいのである。花も壺も果実も作品の象徴にすぎぬ。(中略) 花にたくして壺にたくして、わたくしの魂が神に近づけば、永遠なる真理に近づけば、そして生きて天国に入ることが出来れば完璧である。芸術は怖しい生きものである。あらゆる現世の不幸も、また死も怖しくもなんともないけれども、生きて闘う相手の芸術が一番怖しい。一瞬のすきにも奈落がひかえている。芸術家が神に結合する秘蹟はただ叡智にある。真理に徹した叡智にある。」

(三岸節子「花・壺」『黄色い手帖』より)

「アンダーソンの壺と小鳥」1951年

●上記引用文、旧かなづかいは新かなづかいに改めました。

作品目録

No. 作品名 制作年 サイズ 年齢 材質
自画像  1925(大正14) 30.5×22.0 3F 20 油彩・キャンバス
花・果実 1932(昭和7) 90.0×72.0 30F 27 油彩・キャンバス
群がる馬 1938(昭和13) 162.0×130.0 100F 33 油彩・キャンバス
室内 1939(昭和14) 80.0×130.0 60F 34 油彩・キャンバス
静物 1942(昭和17) 52.7×45.0 10F 37 油彩・キャンバス
室内 1942(昭和17) 91.0×73.0 30F 37 油彩・キャンバス
静物 1943(昭和18) 60.6×72.7 20F 38 油彩・キャンバス
果物 花 1940年代 45.8×53.3 10F   油彩・キャンバス
アンダーソンの壺と小鳥 1951(昭和26) 90.9×72.7 30F 46 油彩・キャンバス
1952(昭和27) 52.5×45.0 10F 47 油彩・キャンバス
花と魚 1952(昭和27) 65.1×90.9 30P 47 油彩・キャンバス
1950〜60年代 53.0×45.5 10F   油彩・キャンバス
かれい 1953(昭和28) 90.9×60.0 30M 48 油彩・キャンバス
静物 1958(昭和33) 65.0×80.5 25F 53 油彩・キャンバス
とうもろこしと魚 1963(昭和38) 80.0×116.5 50P 58 油彩・キャンバス
花(黄色) 1971(昭和46) 45.5×37.9 8F 66 油彩・キャンバス
大運河にて 1973(昭和48) 60.6×73.0 20F 68 油彩・キャンバス
細い運河 1974(昭和49) 92.0×73.0 30F 69 油彩・キャンバス
ブルゴーニュの麦畑 1978(昭和53) 92.0×65.0 30P 73 油彩・キャンバス
作品I 1985(昭和60) 65.0×100.0 40M 80 油彩・キャンバス
小さな町(アンダルシア) 1987(昭和62) 89.0×116.0 50F 82 油彩・キャンバス
作品II 1988(昭和63) 72.6×91.7 30F 83 油彩・キャンバス
白い花(ヴェロンにて) 1989(平成1) 73.0×92.0 30F 84 油彩・キャンバス
作品I 1991(平成3) 130.3×97.0 60F 86 油彩・キャンバス
作品II 1991(平成3) 116.7×90.9 50F 86 油彩・キャンバス
自筆原稿「窓」(「行動」1935年9月、紀伊国屋 掲載)      

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