三岸節子 花・香る -花とともにある人生- 会期:2009年4月7日(火)〜2009年5月10日(日)
“神様がお造りになったもので一番美しいもの――――― それは花。”
94年の生涯で多くの花を育て、それを幾度となく手折り、飾り、キャンバスに描く。
節子にとって花は人生を彩り、生涯、作品のモチーフとした特別な存在でした。
今回は、長い画業のなかで独自の変化をたどり確立した表現で描かれた花の作品に焦点をあて、多様な姿で描かれた“節子の花”の魅力を紐解きご紹介します。
節子は日本でもフランスでも、アトリエを構えた敷地に花壇や畑をつくり好みの花を育てていました。モチーフになった花のほとんどは自身で育て挿したものです。時にはゆったりと愛(め)で、また時にはモチーフとして真剣なまなざしで見つめている画家の様子が伺えます。

愛着のある身近なものから

1940年代の作品は、色彩豊かに生活空間である居間やダイニングの様子を描いています。作品《静物》(4)は、背景に色の点を重ね画面にアクセントをつけたり、テーブルの上のモチーフをそれぞれ違った角度からひとつに構成するなど、色彩や視線の変化を盛り込んだ意欲的な作品です。よく見るとクリスタルのような花瓶に花などを挿した様子が描かれていますが、まだ強い個性は感じられません。しかしこの“花瓶(壺)に挿した花”の取り合わせは、作品の構図としてよく用いられ、花をテーマにした作品の基本的なスタイルとして定着します。
花の作品に定番スタイルが登場!

1950年代頃から、画面全体を使って描くようになります。《花》(7)などに見られるように、花瓶(壺)を画面の中心よりも右に配置することで左側の空間が大きく取れ、触れれば落ちるかのように咲き誇る花の姿や量感を効果的に強調しています。また、花束の中にはその輪郭から想像できそうな花もありますが、どのような花なのか種類を特定する事は難しく、徐々に独自の抽象化した表現へと変化させているのがわかります。
節子の描きたい花とは・・・
「一茎の花を咲かせるにも、たえずそそがれる愛の心がなくては満足な開花はありません。一枚の作品を描きあげるにも、水、肥料をやり、雑草をのぞかねば美しい花を見ることができぬと同様、満足な作品はできないと信じております。ただ、美しい花を、あるがままにうつしとるのでは、花のもつ不思議さも、生命も、画面に見出すことは困難でしょう。いかほど迫真の技術を駆使しえても、ほんものの、一茎の花に劣りましょう。花よりもいっそう花らしい、花の生命を生まなくては、花の実体をつかんで、画面に定着しなければ、花の作品は生れません。」※
節子の心に咲く花・・・

1970−80年代はヴェロン(フランス)にアトリエを構え充実した制作活動を送っていました。この頃になると花の細部は描かず、花束全体をひとつの形として描いているのが特徴的です。《花(ヴェロンにて)》(20)では、古代風の壺に満開の白い花束がしっかりとしたマチエールで描かれ、見る側に咲き誇る生命力を鮮明に伝えてくれます。また《花(ヴェロンにて)》(23)では、一度描いた花の部分に絵具を重ね塗りつぶし、再び思うにまかせ削り描いた不思議な花が目を引きます。この独特なフォルムは、節子が心の中を探り、“花よりもいっそう花らしい”と願う花の姿を具現化しているようです。
※の文章は三岸節子著書『花より花らしく』(1977年求龍堂)より抜粋
作品目録
| No. | 作品名 | 制作年 | サイズ | 号 | 年齢 | 材質 |
| 自画像 | 1925(大正14) | 30.5×22.0 | 3F | 20 | 油彩・キャンバス | |
| 花・果実 | 1932(昭和7) | 90.0×72.0 | 30F | 27 | 油彩・キャンバス | |
| もや | 1937(昭和12) | 60.0×72.5 | 20F | 32 | 油彩・キャンバス | |
| 静物 | 1942(昭和17) | 52.7×45.0 | 10F | 37 | 油彩・キャンバス | |
| 室内 | 1942(昭和17) | 91.0×73.0 | 30F | 37 | 油彩・キャンバス | |
| 果実 花 | 1940年代 | 45.8×53.3 | 10F | 油彩・キャンバス | ||
| 花 | 1951(昭和26頃) | 52.8×45.6 | 10F | 油彩・キャンバス | ||
| 花と魚 | 1952(昭和27) | 65.1×90.9 | 30P | 47 | 油彩・キャンバス | |
| カンナ | 1952(昭和27) | 52.5×45.0 | 10F | 47 | 油彩・キャンバス | |
| 花 | 1952(昭和27) | 45.8×33.5 | 8P | 47 | 油彩・キャンバス | |
| 二つの像 | 1959(昭和34) | 80.3×130.3 | 60M | 54 | 油彩・キャンバス | |
| 花 | 1950年代後半 | 19.0×78.0 | 陶板 | |||
| 花 | 1950年代 | 64.2×41.2 | 変15M | 油彩・キャンバス | ||
| 花 | 1950-60年代 | 53.0×45.5 | 10F | 油彩・キャンバス | ||
| 火の山にて飛ぶ鳥 (軽井沢山荘にて) |
1960(昭和35) | 72.7×60.6 | 20F | 55 | 油彩・キャンバス | |
| カ−ニュ風景 | 1969(昭和44) | 90.9×72.7 | 30F | 64 | 油彩・キャンバス | |
| 花(黄色) | 1971(昭和46) | 45.5×37.9 | 8F | 66 | 油彩・キャンバス | |
| 小運河の家(1) | 1972(昭和47) | 100.0×81.0 | 40F | 67 | 油彩・キャンバス | |
| 小さな町(アンダルシア) | 1987(昭和62) | 89.0×116.0 | 50F | 82 | 油彩・キャンバス | |
| 花(ヴェロンにて) | 1988(昭和63) | 55.0×46.0 | 10F | 83 | 油彩・キャンバス | |
| 花(ヴェロンにて) | 1989(平成1) | 60.0×92.0 | 30M | 84 | 油彩・キャンバス | |
| 白い花(ヴェロンにて) | 1989(平成1) | 73.0×92.0 | 30F | 84 | 油彩・キャンバス | |
| 花(ヴェロンにて) | 1989(平成1) | 72.5×59.7 | 20F | 84 | 油彩・キャンバス | |
| ブルゴーニュにて | 1989(平成1) | 81.0×100.0 | 40F | 84 | 油彩・キャンバス | |
| 作品II | 1992(平成4) | 116.7×90.9 | 50F | 87 | 油彩・キャンバス | |
| さいたさいたさくらがさいた | 1998(平成10) | 130.0×160.0 | 100F | 93 | 油彩・キャンバス |
※都合により展示の内容を一部変更することがあります。
※すべて館蔵作品。

最晩年の大作 《さいたさいたさくらがさいた》を展示しています。