三岸節子 白の世界 〜愛する色〜
室内画のカラフルな色づかいや情熱的な赤色が印象的な三岸節子ですが、「本当は真っ白な絵ばかりを描きたいくらい」※ と語るほど白色を好みました。今回の展示では、時代ごとに作品をたどり、“最上に美しい色”と称した白色を、三岸節子がどのような思いで、どんな風に用いたのかを探ります。
※「VISION」(1982年1月)より
静物画の中の白
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原色を多く用いた室内画を経て、戦後は黒や茶色などを基調とした静物画を多く描きました。「アンダーソンの壺と小鳥」の2羽の白い小鳥や、「花と魚」の白い花などは、褐色の多い画面の中で、清澄でさわやかな美しさを放っています。 |
風景画の中の白
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1930年代、しばしば馬をモチーフに作品を描いていますが、中でも「群がる馬」はこの時期の作品としては大作です。夫の故郷である北海道を訪れた際に見た馬の美しさに惹かれ、黒、白、茶の3種の馬の群れで画面を構成しています。しなやかな姿の白馬は幻想的な雰囲気を演出しています。 三岸はヨーロッパ滞在中にスペインを訪れ、風景画を多く制作しました。中でも赤い屋根と白壁が印象的なアンダルシア地方の家並みを、様々な構図や色調で描きました。「アルカディアの赤い屋根(ガヂスにて)」では、屋根の赤と壁の白が真っ青な空の下で、美しいコントラストを生み出しています。 |
花の作品の白
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花を愛した三岸は、庭で自ら花を育て、室内にも飾って愛でていました。生涯に多くの花の作品を描き、当初はおぼろげながらも花や葉が描き表わされていましたが、やがて花瓶と花の鮮やかな色彩だけが抽象的に描かれた三岸独特の花の作品になっていきました。中でも「白い花(ヴェロンにて))では、真っ白な花と東洋風の人物が添えられた花瓶とを組み合わせ、ひときわ凛とした清らかな美しさを湛えています。 |
赤い花。黄色の花。桃色の花。白い花。灰色の花。
私の花の作品のレパートリーはホンの少しの花である。色彩画家である。
これをあかずくりかえしている。十年一日の如く。
私は白い花が一番好きである。
白い花にわが生命をこめる。そのときのさまざまな心の動きをこめて描く。悲しいとき、生きているのが堪えられぬとき、生命のぎりぎりのとき、白い花を描く。
そんな白い花は五十年、六十年の長い歳月の間に何枚できたことだろう・・・。二枚できたか、四枚?五枚と数えることはできぬ。
私がいまこの一文を書いているアトリエには未完の白い花がある。三十号のたての、白い花の上に赤い太陽のある作品である。もう十数年赤い太陽だけを描いて灰色で埋めてある作品である。
私の魂がしーんと静まりかえっている白い花の作品に描きあげたい。
こういう花の作品に燃えている間、まだ私は死なないであろう。
三岸節子「花譜十二ヶ月」(「ミセス」1992年1月)
作品目録
| No. | 作品名 | 制作年 | 年齢 | 縦×横(cm) | 号 | 技法・材質 |
| 岡田三郎助作「三岸節子肖像」 | 1923(大正12) | 45.8×33.3 | 8P | 岩絵具・キャンバス | ||
| 自画像 | 1925(大正14) | 20 | 30.5×22.0 | 3F | 油彩・キャンバス | |
| 花・果実 | 1932(昭和7) | 27 | 90.0×72.0 | 30F | 油彩・キャンバス | |
| 群がる馬 | 1938(昭和13) | 33 | 162.0×130.0 | 100F | 油彩・キャンバス | |
| 静物 | 1943(昭和18) | 38 | 60.6×72.7 | 20F | 油彩・キャンバス | |
| アンダーソンの壺と小鳥 | 1951(昭和26) | 46 | 90.9×72.7 | 30F | 油彩・キャンバス | |
| 花と魚 | 1952(昭和27) | 47 | 65.1×90.9 | 30P | 油彩・キャンバス | |
| 静物 | 1958(昭和33) | 53 | 65.0×80.5 | 25F | 油彩・キャンバス | |
| 花 | 1950年代 | 64.2×41.2 | 変15M | 油彩・キャンバス | ||
| 花 | 1950年代〜60年代 | 53.0×45.5 | 10F | 油彩・キャンバス | ||
| カーニュ風景 | 1969(昭和44) | 64 | 90.9×72.7 | 30F | 油彩・キャンバス | |
| 朝がきた(ヴェネチア) | 1971(昭和46) | 66 | 90.9×72.7 | 30F | 油彩・キャンバス | |
| 霧 | 1973(昭和48) | 68 | 80.3×65.1 | 25F | 油彩・キャンバス | |
| 雲と海の対話(嵐) | 1975(昭和50) | 70 | 162.1×130.3 | 100F | 油彩・キャンバス | |
| 作品I | 1985(昭和60) | 80 | 65.0×100.0 | 40M | 油彩・キャンバス | |
| モンマルトルの家 | 1987(昭和62) | 82 | 91.2×72.5 | 30F | 油彩・キャンバス | |
| アンダルシアの町 | 1987(昭和62) | 82 | 73.0×92.0 | 30F | 油彩・キャンバス | |
| 城のある町 | 1988(昭和63) | 83 | 120.0×120.0 | 変形50S | 油彩・キャンバス | |
| 花(ヴェロンにて) | 1988(昭和63) | 83 | 55.0×46.0 | 10F | 油彩・キャンバス | |
| アルカディアの赤い屋根(ガヂスにて) | 1988(昭和63) | 83 | 60.0×73.0 | 20F | 油彩・キャンバス | |
| 白い花(ヴェロンにて) | 1989(平成元) | 84 | 73.0×92.0 | 30F | 油彩・キャンバス | |
| 花(ヴェロンにて) | 1989(平成元) | 84 | 60.0×92.0 | 30M | 油彩・キャンバス | |
| 花(ヴェロンにて) | 1989(平成元) | 84 | 72.5×59.7 | 20F | 油彩・キャンバス | |
| さいたさいたさくらがさいた | 1998(平成10) | 93 | 130.0×160.0 | 100F | 油彩・キャンバス | |
| 自筆原稿 尾西市歴史民俗資料館での展覧会の開催について 1989(平成元)年 | ||||||
| 自筆原稿 「三岸節子美術館」 1994(平成6)年 | ||||||


