三岸節子 美の在りか‐画業の歩み‐

生涯をかけて美しいものを探し、絵を描くことを「幸福なこと」とした画家は、どのような美をキャンバスに表現したのでしょうか。今回は、初期から晩年までの作品、そして美に対する思いが記された自筆原稿により、その美の世界をご紹介します。

■りんごの美

作者はスケッチを毎日の日課とし、次のように記しています。「一個の林檎、一個のれもん、そして白い布、アトリエの中に片々と転がっている果実、それが私の小宇宙なのです。そして、この室は、いつも静寂が占めている。一個の林檎を凝視し、白布の皺にさまざまな線があらわれる。これが私の絵画の世界のすべてなのです。」(「絵画の美」より) りんご一個にも美を見出し、身の回りにあるものを繰り返し描くことでその存在や美を凝視して、自らのものとしていきました。

■埴輪の美

1954(昭和29)年、初めての渡欧体験を経た作者は、「日本人の画家としていったい何を描くべきなのだろうか?」と自身に問いかけるようになります。そんな中、帰国後に博物館でみた埴輪に日本古来の素朴で純粋な美を見出し、埴輪のシリーズを描き始めます。黄色や褐色で大胆に構成された画面には、埴輪のもつ温かみが漂います。

■風景の美

「雲と海の対話(夕焼)」(1975)は、神奈川県大磯の自宅に一時帰国していた際に描かれた作品です。このシリーズには、夕焼のほかに嵐や雷、春、冬があり、それぞれ季節や時間、天候の変化により様々に姿を変える海の景色を捉えています。おもに静物画に取り組んでいた作者ですが、フランスに渡ってはじめて本格的に風景画に取り組むようになりました。時折、見慣れた風景がドラマチックに変化する一瞬の光景に美を見出し、独自の風景画を描き出しました。
「雲と海の対話(夕焼)」1975年

■花の美

花を愛した作者は、大磯の庭で自ら花を育て、いつも身近に花を置いて愛でていました。
しかし花の作品を描くときは、実際の花をそのまま描きとるのではなく、花の本質を捉えた“花より花らしい”独自の作品を描きました。「私は美しいものが好きだ。何かをこの地上において求めている。満足のできるもの。完美なものを。純粋無垢のものを。精神がいつも渇いた砂のようにオアシスを求めている。」(画文集「花こそわが命」より)と記していますが、いつも求めていた「完美」なものの一つが花であったのでしょう。作者は生涯にわたって花の絵を描き続けました。
期間中の休館日
7/26(月)、8/2(月)・9(月)・16(月)・23(月)・30(月)、
9/6(月)・13(月)・21(火)・24(金)・27(月)

作品目録

No. 作品名 制作年 年齢 縦×横(cm) 技法・材質
自画像 1925(大正14) 20 30.5×22.0 油彩・キャンバス
風景 1920年代   24.5×33.5 油彩・キャンバス
室内 1939(昭和14) 34 80.0×130.0 油彩・キャンバス
室内 1942(昭和17) 37 91.0×73.0 油彩・キャンバス
静物 1943(昭和18) 38 60.6×72.7 油彩・キャンバス
アンダーソンの壺と小鳥 1951(昭和26) 46 90.9×72.7 油彩・キャンバス
花と魚 1952(昭和27) 47 65.1×90.9 油彩・キャンバス
1952(昭和27) 47 45.8×33.5 油彩・キャンバス
鳥と琴を弾く埴輪 1957(昭和32) 52 97.0×130.3 油彩・キャンバス
静物 1958(昭和33) 53 65.0×80.5 油彩・キャンバス
1950年代   64.2×41.2 油彩・キャンバス
とうもろこしと魚 1963(昭和38) 58 80.0×116.5 油彩・キャンバス
カーニュ風景 1969(昭和44) 64 90.9×72.7 油彩・キャンバス
花(黄色) 1971(昭和46) 66 45.5×37.9 油彩・キャンバス
スペインの白い町 1972(昭和47) 67 72.5×60.0 油彩・キャンバス
小運河の家(1) 1972(昭和47) 67 100.0×81.0 油彩・キャンバス
雲と海の対話(夕焼) 1975(昭和50) 70 65.1×100.0 油彩・キャンバス
ブルゴーニュの麦畑 1978(昭和53) 73 92.0×65.0 油彩・キャンバス
小さな町(アンダルシア) 1987(昭和62) 82 89.0×116.0 油彩・キャンバス
坂の上へ(アンダルシア) 1987(昭和62) 82 92.0×73.0 油彩・キャンバス
作品II 1988(昭和63) 83 72.6×91.7 油彩・キャンバス
花(ヴェロンにて) 1988(昭和63) 83 55.0×46.0 油彩・キャンバス
1989(平成元) 84 73.0×60.0 油彩・キャンバス
作品III 1991(平成3) 86 110.0×110 油彩・キャンバス
自筆原稿「絵画の美」 原稿用紙10枚
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