常設展


 「色彩画家」と呼ばれる三岸節子が、豊かな色彩感覚をいかんなく発揮した代表作を紹介します。色彩あふれる室内画や、情熱的に一つの色彩を追求した作品などをモチーフごとに展示し、その様々な展開をご覧いただきます。



室内画
 節子が画業初期に多く描いた室内画では、鮮やかな色彩感覚を見ることができます。《花・果実》(No.2)では、黄色のテーブルに載った赤いりんご、深緑の布というように、濃厚な色使いがされています。《室内》(No.5)では、中央の絨毯や背景に赤、青、緑といった鮮やかな原色がふんだんに用いられるほか、室内空間を絨毯によって真ん中で遮る画面構成がとられ、装飾的かつ工夫を凝らした作品となっています。この色彩の豊かさは、節子が憧れたフランスのマティスやボナールの色鮮やかな絵画に由来します。また、このような色彩豊かな作品だけではなく、《静物》(No.7)のように画面全体を茶色や赤、黄色などの暖色で統一した作品も制作されています。

馬モチーフ
 1935(昭和10)年ごろには、節子はしばしば馬を作品中に描いており、この頃とくに好んだモチーフであったことがうかがえます。《月夜の縞馬》(No.3)では、暗い色調の青や、灰色が用いられたモノクロの画面の中で、月を見上げる2頭のシマウマとぼんやりとした人々の姿が描かれます。節子には珍しい冷たい印象の作品ですが、節子はこれと同様の構図の絵を、1935(昭和10)年出版の伊藤整翻訳『チャタレイ夫人の恋人』の表紙絵や、1936(昭和11)年開催の第1回七彩会展、第6回独立展に出品した2点に描いています。それに対して、《群がる馬》(No.4)では、馬たちが白、朱、茶色の様々な姿で描かれ、カラフルで暖かい空間が描き出されています。

鳥モチーフ
 1960(昭和35)年頃、節子は軽井沢山荘で鳥をモチーフに連作(No.10、11)を手がけています。この2点では、赤を基調に勢いよく飛ぶ鳥と、青を基調に静かに横たわる鳥が描かれますが、赤と青の色彩対比によって、激しさと静かさという対称的な印象を際立たせています。1960年代、節子は「私は色彩の画家ですから、色彩が未完の過程においても死活を握っております。」(注1)と語っており、節子の絵画制作において色彩が重要な位置を占めていました。《ブルゴーニュにて》(No.17)では、鳥たちが黄色の花畑の上をにぎやかに飛んでいます。画面右端には一羽の翼が覗き、画面の外にも多くの鳥が集まっていることが想像されます。薄ら白い空を暗い雲が覆い、空の明暗の対比、そしてモノクロの空と鮮やかな花畑の対比という2種類の色彩の対比がなされます。

連作における色彩と瓶モチーフ
 他の連作にも色彩の対比は見られます。《雲と海の対話》シリーズ(No.14、15)では、青や白、黒を用いて迫りくる激しい嵐を、黄、橙、赤を用いて夕焼の風景を描いています。節子は空の変わりゆく色彩を好んでいたようで、「風景の美しいのは、明け方か夕暮れのいっときのことである。(中略)やがて空は輝きはじめ、雲たちの描く色彩の饗宴が始まる。それまでのホンの一瞬の過ぎゆく時だけに風景への期待がこもる。」(注2)と語ります。この連作では他に雷、春、冬をテーマにした3点が制作されています。
壺と瓶をモチーフとした3点の連作(No.19〜21)は、1992(平成4)年に開催された「三岸好太郎と三岸節子展」のために新たに制作された作品です。並んだ瓶や壺はどこか人間のようにも見える面白さがあります。用いられている色彩は《作品T》(No.19)では淡い灰色やピンク、《作品U》(No.20)では一転して鮮やかな緑色や青、《作品V》(No.21)では茶色と黒というように3点で異なっています。モチーフは共通ですが、色彩を変化させることで異なる雰囲気の作品に仕上げています。

(注1)(注2)ともに三岸節子『花より花らしく』求龍堂、1977年

展示目録

番号 作品名 制作年 和暦 年齢 縦×横(cm) 技法 材質
1 自画像 1925 大正14 20歳 30.5×22.0 3F 油彩 キャンバス
2 花・果実 1932 昭和7 27歳 90.0×72.0 30F 油彩 キャンバス
3 月夜の縞馬 1936 昭和11 31歳 38.2×63.2 変12P 油彩 板に貼った厚紙
4 群がる馬 1938 昭和13 33歳 162.0×130.0 100F 油彩 キャンバス
5 室内 1939 昭和14 34歳 80.0×130.0 60M 油彩 キャンバス
6 静物 1942 昭和17 37歳 52.7×45.0 10F 油彩 キャンバス
7 静物 1948 昭和23 43歳 53.0×73.0 20P 油彩 キャンバス
8 花と魚 1952 昭和27 47歳 65.1×90.9 30P 油彩 キャンバス
9 かれい 1953 昭和28 48歳 90.9×60.0 30M 油彩 キャンバス
10 火の山にて飛ぶ鳥
(軽井沢山荘にて)
1960 昭和35 55歳 72.7×60.6 30F 油彩 キャンバス
11 飛ぶ鳥(火の山にて) 1962 昭和37 57歳 116.7×91.0 50F 油彩 キャンバス
12 とうもろこしと魚 1963 昭和38 58歳 80.0×116.5 50P 油彩 キャンバス
13 花(黄色) 1971 昭和46 66歳 45.5×37.9 8F 油彩 キャンバス
14 雲と海の対話(嵐) 1975 昭和50 70歳 162.1×130.3 100F 油彩 キャンバス
15 雲と海の対話(夕焼) 1975 昭和50 70歳 65.1×100.0 40M 油彩 キャンバス
16 花(ヴェロンにて)  1988 昭和63 83歳 55.0×46.0 10F 油彩 キャンバス
17 ブルゴーニュにて 1989 平成元 84歳 81.0×100.0 40F 油彩 キャンバス
18 1989 平成元 84歳 73.0×60.0 20F 油彩 キャンバス
19 作品I 1991 平成3 86歳 130.3×97.0 60F 油彩 キャンバス
20 作品II 1991 平成3 86歳 116.7×90.9 50F 油彩 キャンバス
21 作品III 1991 平成3 86歳 110.0×110.0 60S 油彩 キャンバス

※都合により展示の内容を一部変更することがあります。すべて所蔵作品。作品目録のNo.は作品の並びと異なります。

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一宮市三岸節子記念美術館
〒494-0007愛知県一宮市小信中島字郷南3147-1
TEL.0586-63-2892 FAX.0586-63-2893
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