三岸節子短歌ポスト入選作品(平成27年前期分)

選者 小塩卓哉(中部日本歌人会委員長)

 

■□■優秀作品■□■

*さいたさいたさくらがさいた*

老いるとは老い尽くすこと燃え立つこと終(つい)の桜のこの力動よ

一宮市  森孝行

評》老いるということの定義を、上句では畳みかけるように言っている。とことんまで老いても、なお燃え立つエネルギーを秘めるべきだと言うことだろう。下句は、そのような老いを実践し、大作の絵を描き上げた節子のことを讃えている。「力動」という漢語がいかにも力強い。

 

*雲と海の対話(嵐)*

嵐来る海鳴り強く浜辺にてその勢いに負けじと我は

浜松市 寺澤暢紘

《評》いわば、雲と海との対話に直面する作者自身を詠み込んだ歌。まるで、この絵の中に、自身を描き込んだような趣さえ感じる。激しい嵐にも負けまいというところに、自分の生き様を示しているようでもある。「嵐来る」は、初句切れ。そのことによって七五調の歌となった。

 

*月夜の縞馬*

春浅き三岸節子の美術館「月夜の縞馬」何語りをる

日進市 稲葉千鶴子

《評》「月夜の縞馬」という作品そのものは、下句で扱っている。しかも、画題をそのまま使っているので、作者の認識は「何語りをる」だけである。しかし、一首全体では、この絵が収まる美術館そのものを扱っている。美術館の全景を描き、そこから展示室のこの絵へとクローズアップしていくような感覚を読者に与えるのである。結句の「をる」は連体形。縞馬たちよ、何を語っているのだ、という疑問と詠嘆が混ざった感覚であろう。

 

■□■佳 作■□■

*その他*

節子展あまた並べる力作に元気をもらい「ありがとう」出る

一宮市 佐々すえ子

*花*

命にて求め命をこめし色わが魂に火ともす色よ

一宮市 岩本理恵

*その他*

うしないし十余年の言の葉はイーゼルに重なりし絵の具の下に

玉井利男

*さいたさいたさくらがさいた*

吐くことはなお恐しく吸うことも忘れるほどの妖気に満ちて

名古屋市 古井戸立子

*朝が来た(ヴェネチア)*

爽やかな朝の太陽背に受けて海辺を歩き心ひらめく

一宮市 竹田義弘

*室内*

家の中大切な物落ちつくな色とりどりの家族もいるよ

豊田市 堂脇杏奈

■■■■■お問い合わせ■■■■■
一宮市三岸節子記念美術館
〒494-0007愛知県一宮市小信中島字郷南3147-1
TEL.0586-63-2892 FAX.0586-63-2893

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